「アライアンスー人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」はこれからの人事部の教科書
MBAの授業でも、やっぱり普段問題意識を持っているトピックの授業はとても面白いし、頭にすっと入ってくる。
自分が所属している企業含め、多くの伝統的な日本企業が副業の話題を始め、何らかの形で変わろうとしている環境の中で、自分も一企業人として、当然ながら関心があり、組織論等のディスカッションは自分の元職場をイメージしながら議論している。
デジタルネイティブ世代
IESEの授業の中で、面白い授業の一つにManagement Controlの授業があった。
名物教授ということで楽しみにしていたのだが、実際に期待通りTake Awayの大変多い授業だった。
以下の図は、教授が授業の中で紹介していた図だが、自分の中でふんわりと感じていたことをシンプルに表現していて、筆者のお気に入りの図となった。
この図を使って、教授は2つのことを説明した。
1.旧来型企業とイノベーション型の企業
左側は旧来型のヒエラルキーの意識の強い、昔ながらの企業。日本にはこちら側が多い。それに対して、右側は、昨今イノベーションを次々に生み出してる企業。
2.非デジタルネイティブとデジタルネイティブ世代
そしてもう一つは、もちろん個人差はあるし、一概に一括りに出来ないことは最初に述べた上で、左側は50〜60代、右側が生まれた時からスマホがある世代。
そりゃ生まれた時からスマホに触って、世界中の人々とオンラインで気軽に繋がっている世代と、手紙でやり取りしていた世代で、価値観違うに決まってるじゃん。
それを認めた上で、社内の組織作りをしましょうという話だった。
この表見れば見るほど、左側は典型的な日本企業に当てはまるし、右側は一方で今の日本人の若い人が、実際日本の会社で働いてみて、現実とのギャップに苦しむ理由を端的に表しているような気がしてとても印象的だった。
この世代間ギャップのようなものは、常に頭に入れて行動しなけえればいけないと思った。
教授が引用した、この図の元の記事を読んでみると、オンラインサービスの著しい発展に伴い、組織も柔軟に変化していかないといけないが、どのように変われば良いかという話であって、世代間格差という話では必ずしもなかったけど、とてもすっきり整理された図で筆者は気に入った。
企業と個人のアライアンス
MBAの授業は基本的にケース形式である。
事前に学生がケースを読んで、その内容について議論をしていく。
大抵の場合、具体的な「解」は存在しない。
教授もバチっとこれが解答!と述べることはない。授業でのディスカッションを通して、なるほどそういう見方もあるのか、とか学術的にはそういう見解するのか等などの知見を得るのだが、結局どうしたらいいの?!というモヤモヤが残ることも多々ある。(そのモヤモヤが残った状態で、他の授業を受けたり、同級生と何気ない話をしているとふと頭の中に自分なりの応えが浮かぶこともあるのだけど。)
ましてや組織論やHR論は、ぼやけた議論になることが多い。
そんな中、移動中に読んだ「アライアンスー人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」は衝撃的だった。上に紹介した図よりもすっと頭に入ってきた。
この本は出版されてからずっと読もうと思っていたのだけど、 手にとるのが思っていたより遅くなってしまった。
その理由は恐らく2つある。1つ目は、アライアンスというタイトルから何となく、よくある個人が副業を通して、社外で繋がろう的な内容の本ではないかと勝手に想像してしまっていたこと(実際は全く異なる)。
もう1つは個人的にアライアンスという言葉に、勝手にネガティブなイメージを持ってしまっていたっこと。
勢いを失った日本企業が、勢いのある外資企業に対抗するため、戦いの舞台に残るにはアライアンスを組むしかなく、「仕方なくとる受け身の戦術」、というどちらかというネガティブなイメージを勝手に自分が持っていたからである。
東京糸井重里事務所 取締役CFO 篠田真貴子さん
一方で、この本は絶対に読みたいと思う大きな理由があった。それは監訳者の篠田さんは、CEIBSの授業の中でお話を聞いたことがあったからで、そのときとても感銘を受けたからである。
CEIBSでは毎年1年目の12月に、1週間の海外モジュールがある。
イスラエル、ドイツ、アメリカ、マレーシア、そして日本と選択肢があり、どこも大体一日の半日座学を受けて、半日実際に現地企業を訪問するというプログラムである。
筆者は同級生及び学校に貢献出来る数少ない機会と思い、日本モジュールに参加。日本モジュールを選んだ40人の同級生達を引率し、モジュール後に同級生達を連れてジャパントリップを敢行した。
その日本モジュールの中で、授業の一環で上場前のほぼ日を訪れる機会を得て、CFOの篠田さんのお話を聞くことが出来た。
もちろん全て英語で対応頂いたのだが、会社の説明から、Q&Aまで、2時間以上立ちながら、同級生達のアグレッシブな質問にも、一つ一つ丁寧に真摯にご対応頂いたのが大変印象的だった。CEIBSの授業に対して、とってもシビアな評価を下す中国人同級生達も大変満足していた様子だった。
(今年も一つ下の代が、お世話になったと伺っております。ほぼ日の皆様、篠田様本当に有難う御座います。)
「アライアンスー人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」はこれからの人事部の教科書
この本が筆者の心に刺さって、フィットした理由は大きく3つあると思う。
1つ目は、この本はとても計算された、無駄のない構成だということ。前半部分で、多くの企業の抱えている問題点を説明し、後半でいくつかの有効な対策・解答を具体的、且つシンプルな解答を示している。
一連の流れの中で、一切不明瞭な点がなく、読み終わった時には頭の中がクリアになっている。
後半部分の具体的な解決方法については、逆にこんなシンプルな解答をなぜ自分は思いつかなかったのかと悔しく思うほどであった。
2つ目は、その与えられた解答の多くが、すぐに誰でも実行可能という点である。
本書の中で示されている解答の多くは、投資にそこまでの費用がかからない、どんな会社でもすぐに実践出来るものばかりなのである。
その中でも筆者が注目したのは「卒業生ネットワークの構築と活用」という解答である。
転職して会社を去る人をどこか裏切り者のように扱う、昔ながらの日本企業の風潮にはとても疑問に思っていた。
実は、自分がIESEに交換留学していた際に、自分の現在所属している会社を辞めて、MBA留学をしに欧州に来ている元会社同期の友人と1泊2日の旅行をした。
そこで実感したのは、彼は本当に会社に感謝をしているし、今でも会社が大好きだということだった。
そしてこれは彼に限らずに、他の当社を辞めた人にも当てはまる。
彼らを生かさない手はないなと思っていたので、すぐにピンときた。
彼らが会社に出戻り出来る環境のみならず、彼らに一緒に今会社が抱えている問題について考えてもらい、何なら必要な人材を紹介してもらう。
会社のことをよく知っている彼らの意見がどんなコンサルタントよりもより効果的に決まっている。
何より、社内にいる人の数より社外にいる人の数の方が全然多い。
これはやるべきではなくて、やらなきゃいけないと強く感じた。
3つ目は、読んだタイミングがとても良かった。日本企業がどう変わればいいのかという点について、ともかく色々考えてはいるのだけど、明確な解答が出てこず、MBAの授業を通じても解決せずに、とにかくもやもやしていた。
そんな時に、この本に出会ったので、とにかくタイミングが良かったのだと思う。
アハ体験(大分古い?)のような、脳内に快感を得ることが出来た。
自分のみならず、考えてもどうしたら良いかわからないというような人や人事部の方は多いのではないだろうか。絶対に読んだほうが良い。
という訳で、自分はこの本は、これからのHRの教科書じゃないかと思った。
そして、ここで紹介されている方法は、HRじゃなくても個人レベルでも出来ることが多い(例えば卒業生ネットワークは、Linkedinですぐにグループを作ることが出来る)。
自分もすぐに実践するとここで宣言して、自分にプレッシャーをかけることにしたい。