なぜチャイナのMBAスクールが世界11位に?!(前編)
旧正月中の台湾旅行を通じて、台湾は中国とは全然異なる文化ということを認識した。
それまでは、CEIBSで活躍し、中国人同級生の輪に溶け込んでいる台湾人同級生達をみて、言葉が一緒だし、文化も近いものがあって中国でやっていくために、CEIBSにアジャストするのは難しくないんだろうなと思っていた。
台湾人だってCEIBSでやっていくのはとても大変
しかしながら、今回の旅行を通じて、彼らは我々日本人が中国でやっていくのと同等のストレスを感じながら、日々戦っていると認識させられた。
なぜなら、台湾でも日本と同様に、対中感情は良くない。中国に対する国民全体の印象は正直悪い。また空気も台湾の方が良いし、街も整備されている。更に、台湾にだってまだ職はたくさんあるので、台湾内に留まって生活を完結させることだってもちろんできる。
なんと驚くべきことに、多くの台湾企業では、中国での学位(MBA含む)は学位として認められないらしい。台湾の企業なんかで働く気はないので問題ないと同級生は言っていたが、それらのハードルを乗り越えて、彼らは中国で戦う決断をしてきている。
正直台湾に帰りたいと多くの台湾人同級生が漏らしていたように、彼らもまた、相当な圧を中国で受けながら、それに見合うリターンが必ずあると信じて日々戦っているのである。
Financial TimesのグローバルMBAランキングの解説
先日Financial Timesの2017年のMBA世界ランキングが発表された。
そこでCEIBSはHKUSTからアジア1位の座を奪還し、世界11位に返り咲いている。
日経アジア版でもCEIBSに関する記事が出ている。
そこで何で中国のMBAスクールがこんなにランキング高いの?!
どうせ裏金でも渡してんだろ!?
という大衆の疑問をクリアにするべく、なぜCEIBSのランキングが高くなるのか説明することにした。
まずFinancial Times(FT)のグローバルなランキングをみて、日本のMBAスクールが一校も入っていないことにすぐに気付く。
実は、FTのランキングに参加するには条件がある。MBAの質を管理してる団体が世界にいくつかあり、その団体から基準をクリアしていると認められる必要があるのだ。
日本のMBAスクールがランクインしていない理由
一つ目は“EQUIS”(European Quality Improvement System)という団体で、ベルギーのブリュッセルに本部があり、世界38カ国で138校の学校を認定してる。
二つ目は“AACSB”(The Association to Advance Collegiate Schools of Business)という団体で、米国フロリダに本部を持ち、世界42カ国、687校のビジネススクールを認定している。
このどちらかの基準をクリアすることがFTのランキングに参加する最低条件なのだが、実は日本には、この基準をクリアしているMBAスクールが慶應義塾大学と名古屋商科大学の二校しかない。今現在、早稲田大学等複数の大学がこの資格の取得に向かっていると言われている。
取得にも審査の時間がかかり、またランキングに乗るにも、取得してから数年が必要なため、日本の複数の大学が仮に数年以内に国際機関から認められても、ランキングに入ってくるのはまだ大分先になる。
日本のMBAスクールは、なぜ早い段階で国際機関に認められるように努力しなかったのか。それは、この国際的な基準をクリアするためには、一定以上の多様な国籍の教授陣、教授陣の一年間に国際的な舞台で発表する論文数、学生の多様性等たくさんの基準をクリアしなければならず、かなりの投資が必要となる。
更に基準をクリアしたら終わりではなく、定期的に各機関からの監査が入るので、常に高い水準に保っておく努力が必要となる。
日本のMBAスクールの場合は、この投資に対するリターンが見込めないということでこの基準の取得を見送っていた学校が多かったと思うが、ここに来て、限りある日本人のMBAに対する需要では、経営が苦しく、外国人を呼び込むために各機関の基準をクリアしようとしている。
なぜ中国等がクリアする動きに合わせて動くことが出来なかったのか、今となっては中国のスクールとは天と地の差が開いてしまっている。
ココらへんの事情は遠藤功著の「結論を言おう、日本人にMBAはいらない (角川新書)」により内情が書いてあり、筆者もランキングについての本記事を作成にあたってざっと読んだが、主に遠藤氏の主張は、
1.MBAの勉強内容自体にさほど意味はない。
2.但し、海外からハングリー精神旺盛な外国人に揉まれて生活すること自体にはとても意味がある。
3.2の点がない国内MBAを評価する会社は少ない。
4.1〜3を踏まえ国内MBAに行く価値はない。
と理解した。
面白いことに遠藤氏は、中国(北京)のCKGSBというMBAスクールで教授を数年間勤めておられ、中国の学生、MBAスクールの勢いに圧倒された旨が日本のMBAスクールとの対比で記載されている。
個人的には、改めてアジアの中国という場でMBAを学んでいることを本著を読んで後押しされた気がする。
ちなみに、基本的には早稲田MBAの内情に関する暴露本で、特に得るものはないので購入してまで読む必要はない。
Financial Timesのランキングのポイントの付け方
上の表で「卒業後」となっているのは全て卒業後3年目の卒業生を対象にしている。
上のFinancial Timesの採点基準からもわかるように、「卒業後3年目での給料」と「卒業後3年目と入学前の給料の昇給率」が各々20%で、高い配点がつけられている。
MBAが巨額の投資という意味では、当然とも言える。
ついで教授陣が世界的な雑誌等に論文を掲載出来ているか(教授の質、10%)が続く。
次回は各スクール(主にアジア)の分析に移りたい。
(追記)2017年2月8日
立命館大学APUもAACSBを昨年8月に取得済み。