私費と社費とマヨルカ島
IESEに交換留学中に、想定外の良い出来事があった。
それは、今の会社の元同期が同じタイミングで、IESEに留学していたことであった。
ここでは仮名でカツオとしておく。
カツオは、筆者が今いる会社を辞めて私費で筆者の一つ下の代でIESEに留学していた。
しかし当然ながら彼は1年目で必修科目に加えて、インターン(職)探しと大変多忙で、なかなか相手にしてもらえず、年末の学期が終わってようやくカツオも時間が出来、一泊二日の弾丸で小生のIESE卒業旅行も兼ねて2人で旅行に行くことにした。
はっきり言って、場所なんてどこでも良かったが、近場でバルセロナとは違った雰囲気の場所ということで、マヨルカ島をピックした。
カツオとは大学は違えど、なんと偶然にも同じスポーツ(ラクロス)を大学時代にやっており、共通の話題が盛りだくさんであった。
(全然関係ないが、MBAに来ている人でラクロス経験者は多いように感じる。前の学期も、今の学期もCEIBSに交換留学に来ている日本人の方はラクロス経験者である)
マヨルカ島はスペインの中の沖縄的立ち位置と聞いていたが、さすがに年末はマヨルカ島といえどまあまあ寒く、観光はオフシーズンっぽかった。
そこで我々は、基本的に食べることに専念した。
↓こちらが泊まっていたAirbnbのオーナーから教えてもらった超絶うまかったレストラン。
これはまた別のレストラン。
ちなみに最後のは、マヨルカ島は全然関係なく、バルセロナに戻っきて、腹が減ったということで中国人の経営している日本料理屋で食べた謎のどんぶりである。
この旅行中で一気に太ったと思う。
衝撃的だが、マヨルカ島についてこのブログで紹介するのは、以上で終わりである。
とにかくご飯が美味しい島であった。
カツオとのドライブ道中
カツオがMBAを志しているのを知ったのは、筆者のMBA受験が終わってからだったように記憶している。
基本的にMBAを受験する人は、直前まで会社には内緒で準備する。
筆者がMBAに行くことを知ったカツオと、久々に会社の昼飯に会社近くでラーメン(デブまっしぐら)を食べながら、実はカツオがMBA受験に備えて、筆者がMBA受験の準備を始めるはるか前から、コツコツ準備をしていたことを知った。
とても衝撃を受けたのを覚えている。
基本的に我々の属している業界で働いている人は、安定志向の人も多いからか、会社をやめてまでMBAを志す人はとても少ない。
日本人のみならず、MBAの同期をみても同じようなバックグランドの人はとても少ない。
そんな周りは今の会社でずっと勤め上げようとしている人達が多い中、生活費含めて2千万円以上払ってでも、リスクをとって留学しようとしている覚悟に、また前例もほとんどないのに、長い月日をかけて着実に目標に向かって努力していたのかと、カツオの秘めたパッションに、ただただ驚き、一方でこんな熱いやつが近くにいたのかととても嬉しくなったのを覚えている。
マヨルカ島では、車で移動する時間が多く(筆者は、国際免許を持っていなかったため、もっぱらカツオ運転)、移動中はApple Musicでひたすら宇多田ヒカルを流しながら、多分80%くらいは我々の将来について話をした。
残りの20%は飯とダイエットについてである。
「いやーこんだけ食ったら明日からダイエット頑張らなきゃな。」
無論意図的なダイエットなんてしたことは2人ともない。
ちなみにどうでもいいが、自分はストレスがかかると痩せるタイプでMBA受験時や、MBA最初の1年は激やせした。カツオは基本太るタイプだが、IESE内の食堂が夜はやっていないこともあり、うまいこと最初の半年は体重をキープした印象である。
将来の話については、どれだけ話をしても全く結論は出なかった。
明確なのは、自分は会社に戻って、カツオはもう戻らないということだった。
そこが出発点となって話が進む。
カツオとのトークの中で3つ気付いたことがあった。
1. 2人とも人生1回ということを強く意識している。
筆者は社会人4ー5年目の時に、社会人ラクロスチームの先輩が癌で亡くなった。また、カツオも父親がまだカツオが小さい時に亡くなっていた。
これらが影響しているからかは分からないが、割とほかの同世代よりも、明日死ぬかわからないからチャレンジしたい、世界をみたいという気持ちが強い方だと思った。
だって人生1回だし、サラリーマンやってたら、海外でMBAとりたくね??
だよねだよね。
こんな感じの共通認識である。とても気持ちが良い。
2. カツオの会社愛が凄まじい
この旅行中、彼の口から、やめた会社に対する悪口は一度も聞いたことがない。
むしろ出てくるのは、会社に対する感謝と、会社の未来に対する心配であった。
もう辞めているのに。
これは、結構日本人独特なのか、少なくもうちの会社を離れる若手は皆そうな気がする。辞めても会社が大好きである。
なぜこんなに会社が好きなのに、辞めたのかと思うほどである。
きっとそれ以上に色んな世界が見たいという気持ちが勝ったということだと思う。
これは会社としては活用しない手はないと思うが、今のところ制度は整っていない。
今後事業環境が大きく変わって、中の人材だけでは対応出来ずに、色々な経験を積んだ人材となった時に、彼らが必要となるはずである。
もう一社にずっと骨を埋める時代では間違いなくないので、前にブログでも書いたけどアラムナイ(卒業生)マネジメントは絶対に必要になる。
じゃないと数年後に、会社を背負っていく我々世代が困る。
3. やっぱりMBAは私費の人のためのもの
これはカツオと話す前から感じていたが、彼をみているとやはり強く思った。
退路を絶った人たちの真剣勝負。それがMBAの醍醐味であり、本質なんだと思う。
カツオはいつかは会社に恩返しがしたいなーと数え切れないくらい言っていた。
録音しておけば、数年後カツオがスーパーマンになった時に呼び寄せる道具に使えたのに失敗した。
また数年後に、ビックになったカツオと宇多田ヒカル聴きながらどっかドライブしたい(上海は危ないから上海以外で)。
MBA最後のタームの過ごし方(ファイナンスマンになりたい)
MBAのライフも最終コーナーを回って最後の直線に入っている。
CEIBSのMBAは以下のように7つのタームから構成されている。
こちらはMBA初日のオリエンテーションで、アドミッション・オフィスから説明の際に使われている、MBAのライフと、その時々の学生の精神状態を表した
恐ろしく分かり易い図↓
今筆者はこの図の中の、ターム7にいる。一つ下の代は、現在ターム3である。
なるほど確かに、周りの同級生を見ていると、職探しに奔走しており焦っている同級生もいれば、職探しもしつつ焦らずに授業もそこそこ取って、学生生活も謳歌している学生もいれば様々である。
言うなればこんな感じ↓
ちなみにIESEに交換留学行っていたタームはターム6にあたり、間違いなく毎日こんな感じであった。↓
そして、今一つ下の代は、地獄のターム1、2を乗り越えて、更にターム3の成績を踏まえて奨学金を返済せずにすむかどうか決まり(成績が上位に入っていないと奨学金を返済しないといけない)、また交換留学先も決まる。
まさしくこんな感じである↓
ターム7では、選択科目を取ると、一個下の代と一緒に授業を受け、グループワークをすることになるので、全く違う状況・精神状態の人間が混ざり合っている。
周りの同級生は授業をセーブして、それ以外の活動に時間を割いている中、
筆者はというと、実は真逆に授業を取りまくっている。しかもそれが全てファイナンス関連の授業である。
このような戦略に出たにはいくつか理由がある。
1.ファイナンスの授業が最も役立つ
自分のキャリアを考えた時に、自分のバックグラウンド(ロジスティクス)ではマーケティング等の知識よりも、ファイナンスの知識の方が今後役立つとだろうなと思うに至った。
これはもちろんその人のキャリアに依る。
2.CEIBSでは「専攻科目」をつける事ができる。
CEIBS卒業時にMBAの学位の下に、特定の授業を取り一定の成績を収めると
「マーケティング」「ファイナンス」「アントレプレナー」「デジタルビジネス」のいずれかの「専攻」をしたと認められ、卒業証書に記載される。
筆者はこの中でファイナンス専攻と名乗りたいと考えている。
3.何か尖ったものが欲しかった。
MBAに来てみて分かったが、MBAは何か専門分野を持った人が、経営に関するジェネラルな知識を身に付ける場所である。
日本企業はジョブローテーション等でジェネラリストを育成しようという傾向にある企業が多いと思う。
小生もご多分に漏れずジェネラリストであり、このままMBAの知識を身に着けても、ジェネラリストが更にちょっと大きくなったジェネラリストになっただけになってしまうという危機感があり、何か一つをがっつり学びたいと思っていた。
4.授業が難しすぎる
この学期にとっている授業の中には、とても課題が多く、グループワークも多いヘビーで有名な授業がいくつかある。
そして、それらは昨年のこの時期に(ターム3)とることも出来たのだが、その時期はコアの必修科目も多くあり、同時並行でこれらのファイナンスのアドバンストコースを学ぶのは小生のキャパオーバーになると判断した。
このターム7であれば、ベビーな授業と言えど、その授業だけに集中することが出来る。
ファイナンスバックグラウンドのない筆者にとって絶好のタイミングなのである。
実際に、今とっている授業は、ヘビーだが、学びが多いことで有名な授業でもあり、授業のみならず、グループワークからたくさんの学びがあり、時間はとられるが筆者は大変満足している。
5.交換留学中に旅行に行きまくった
IESE交換留学期間中に、バルセロナに住むチャンスなんて二度とないと思い、
毎週末無理矢理にでも、スペイン内の他の都市や、隣国に出かけた。
結果12,13カ国位は回り、旅行はお腹いっぱいとなった。
正にこのタームに集中して勉強するためだったとも言える。作戦通り。
ということで、年末東京に帰った際に、ブックオフで適当に買い込んだファイナンス本と共に、残りのタームは集中したいと思う。
フランス前首相が教授に就任(中国MBAでの教授陣のサバイバル)
CEIBSの教授陣は頻繁に入れ替わる。
学生からのフィードバックはとても重要で、学生からの評価が低い教授はいなくなって、また新しい教授をCEIBSが探して連れてくる。
MBAの教授陣も厳しい競争環境
学生の評価ばかり気にしてたら、本来やるべき授業が出来なくなる、もしくはヌルい授業になってしまうのでは、、と思う人もいるかもしれないが、
基本的にここは借金をして、生活費等含めると1000万円以上の出費をして、本気で何かを掴みに来ている学生達の集まりである。
学生も各授業にもそれなりのリターンを当然ながら求め、その価値が無いと判断すると、授業期間中でも教授を変えるようにクレームもするし、アドミッションオフィスに激怒もする。
教授が漏らしていたが、そのため、EMBA生(起業家や上場企業幹部等のエグゼクティブ向けのMBA)の授業が一番大変だし、緊張すると言っていた。
学生もMBAとは比べものにならない位経験を積んだ方々ばかりだからである。
ちなみにアリババ創設者のジャック・マーも北京にある長江商学院のEMBAコースで学んでいた。
ジャック・マーに何を教えるんだよと思うかもしれないが、EMBAはより、ビジネスに直結する人脈形成を目的にしている方々が多いように思うので、必ずしも学問だけを目的にして来ているわけではない。
中国MBA生からのフィードバックのすごさについては、長江商学院で教鞭をとられたことのある遠藤氏のこちらの本で少し紹介されている。
少しだけこの長江商学院の話の部分だけ紹介すると、長江商学院のEMBAの学生が、授業の一環で来日した際に、遠藤氏が半日ほど講義を担当した。
それから2週間後に突然長江商学院の副学長から連絡があり、長江商学院で授業を持って欲しいと連絡をしてきたというのだ。
以下、本書より二つ紹介したい。
突然の教授就要請
以下本書より一部抜粋。
「私は驚いた。学生たちが日本で私の講義を受けたのは、わずか二週間前だ。その声がすぐ副学長に届き、副学長自らが私に電話をしてくる。このスピード感は日本においては大学はもとより、一般企業でもありえない」
授業に不満でボイコット
またこちらは中国ではなくシンガポールのMBA生との出来事。以下本書より抜粋。
「あるとき、私の授業が終わると、何人かの学生が真剣な顔つきで私に詰め寄って来た。何事かと思って話を聞くと、早稲田ビジネススクールから派遣されているもう1人の教授の授業内容がひどすぎるからなんとかしろ、と私に文句を言って来たのだ。改善されなければ、その教授の授業をボイコットすると言う。」
ここらへんの事情はCEIBSで授業を受けてよく理解できる。
CEIBSから新しい教授就任のメールが
そんなこんなで教授の入れ替わりが激しく、アドミッションオフィスからよく新しい教授の紹介メールが届くのだが、昨日届いたメールがこちら。
いつも通り新しい教授の紹介かと思ってメールを見ると
フランスの前首相!!
さらっと一国の前首相が教授に就任してしまう。
これも中国MBAのすごさである。
ちなみに筆者がIESEに交換留CEIBSに講演に来てくださっていた↓
このような重大な意思決定や、新しい優秀な教授の発掘のために世界中を飛び回っている重要人物。
それがCEIBSの場合も副学長である。
以下にもやり手そうなこのおっさん方。
二月に日本にもやってくるので、是非フランス前首相を口説いた彼の講演も来ていただけたらと思う。